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2011年9月2日金曜日

共有不動産買取請求の際の金額に関して

共有の不動産について、
他の共有者に買取請求をする際の金額に関してご質問を受けました。

【ケース】
Aは土地・建物1/4所有
Bは土地・建物3/4所有
建物は木造の築後40年以上の古家で価値0
土地の上に貸家が6戸(1戸空家)

土地・建物一括で6,000万円で売却する話があったがAが売却には反対
それに対しBは「6,000万円×自身の持分3/4=4,500万円で買取れ」とAに請求
Aは「4,500万円は高すぎる。所有権の一部3/4を売却する場合、当然に評価は3/4より下がる」と主張
この場合、Bの持分の評価はどうなるのでしょうか?

【ご回答】
他の共有者の同意がなければ、共有物の売却はできません。
民法第251条
「各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。」
売却は同条の「変更」に該当するからです。
したがって、
A:土地・建物の1/4所有
B:土地・建物の3/4所有
の土地・建物を一括で売却するのは、Aの同意がなければならず、
おっしゃる通り、Aが売却には反対の場合、売却することはできません。

ただし、このような場合、
Bは共有物を分割して単独所有にすることをAに請求することができます。
Aが分割に応じない場合、裁判所に分け方を決めてもらうこともできます。
民法第256条第1項本文
「各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。」
民法第258条第1項
「共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。」
民法第258条第2項
「前項の場合において、共有物の現物を分割することができないとき、
又は分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、その競売を命ずることができる。」

分割の方法は、
①現物分割(現物を分ける)、
②代償分割(どちらかが買取りお金で精算する)、
③換価分割(売って代金を分ける)、
の組み合わせによります。


現状は土地の上に建物(木造築40年以上・貸家)が6戸(No.1~6)ということですので、
Bは土地の3/4、建物の3/4、を単独所有になるように
①現物分割することは比較的容易であると考えられます。
同じ道路に面した土地の上に均等に建物が建っていると仮定すると、
No.1~4までの建物及びその敷地をB単独所有、
No.5の建物及びその敷地をA単独所有、
No.6の建物及びその敷地をA・Bの区分所有とする
ことが考えられます。
建物は価値0、貸家のうち1戸が空きということですので、
No.6の建物及びその敷地を当該空家に当てることができれば、
建物は取壊し、当該敷地の1/2をA単独所有、1/2をB単独所有とすることが考えられます。


御質問のBが自身の持分3/4をAに買い取れという状況は②代償分割に該当します。
もちろんBは買取を請求することができますが、
金額について協議が整っていないため、裁判所に請求をすることができます。
Bが代償分割を請求した場合、裁判所が代償分割を認めて金額を指示するか、
現物分割を指示するかは当職には判断できませんが、
分割の方法の選択に関する基本原則は、
当事者の意向を踏まえた上での①現物分割であり、
それが困難な場合には①現物分割に代わる手段として②代償分割、
②代償分割すら困難な場合には③換価分割
であると考えられるので、
対象不動産の場合、①現物分割を選択されるほうが自然であると思われます。

但し、②代償分割が選択された場合、
その金額についてですが、
(1)共有持分を「第三者」が買取る場合、
上記の通り共有物の変更(売却、増改築等)には他の共有者の同意が必要であり、
完全所有権に比較して権利が制限されていること、
共有持分の流通性が低いことから、
その価格は非常に低くなります。
(Aが主張しているのはこの点に基づいていると思われます)

一方、
(2)共有持分を「他の共有者」が買取る場合、
この金額は、判例により「適正な相場の価格」であるとされています。
なぜなら共有物分割訴訟の場合、共有者間の実質的公平を図る必要があるからです。
各当事者が裁判所にそれぞれ主張する金額の根拠となる鑑定書を提出することがあります。
多くの場合は評価額に開きが出てきます。
(これは共有だからではなく、全体不動産の価格に開差が生じるからです)
評価額の見解の違いが解消されなかった場合は、
最終的には裁判所が中立の不動産鑑定士を「鑑定人」として選任し、
鑑定人が中立な立場で評価額決定し、それに基づき判決が出されることになります。


したがって、Aの主張のように「当然評価額が相場より下がる」わけではありません。
鑑定評価上はAの主張のように共有持分だから当然マイナスということはないと考えます。